鳥獣戯画

2020年11月7日に高山寺に出かけた。そこには鳥獣戯画があった。教科書でしか見たことのない戯画を見ることができたのは、とても貴重な体験だった。

カエルがウサギと相撲をして、投げ飛ばしているシーンがある。これは、「宮川 禎一 作 鳥獣戯画のヒミツ」によれば、pp.147-148に次のことが記されている。

 さて、次にウサギがカエルに投げ飛ばされる印象的なシーンですが、負けたウサギは笑っています。全く悔しそうではありません。なぜ負けて嬉しいのか。これが子供の相撲を動物で表現しただけの場面ならば、負ければ必ず悔しいはずです。投げられたウサギが笑っている理由。それはもちろん釈迦に挑戦できて、自分を投げ飛ばしていただいたから嬉しいのです。いつも明恵上人が心の中で切望していた夢の対決だったはずです。その姿は生涯かけて釈迦を思慕し、追求した上人の「あるべきよう」そのものだからです。
勝ったカエル(お釈迦様)の口からなにやら言葉のような気配が曲線で表現されていますが、勝利の雄たけびではなくて、たぶん次のような感じです。

「日本国からやってきた高弁(明恵)とやら、私の教えを学んで研究して修行を重ねてきたとか言うが、おぬしの修行や理解などまだまだ全然足りんわい。顔洗って出直して来い!」

 憧れの師匠に相撲でぶつかって組みあって投げ飛ばされてこう言われるのが明恵上人自身への最高の励ましですよね。周りのカエルたち(阿難とか印度の本当の釈迦の弟子たちでしょう)からもゲラゲラ笑われています。

感想:
ウサギが釈迦尊で、カエルが明恵上人であると解釈している。その根拠は、カエルがウサギに耳を齧られる図があって、これが修行の中で自ら右耳の上、三分の一ほどを切り落としたことを表しているので、鳥獣戯画の制作者であった明恵上人の夢を描いたのが、ウサギである釈迦尊に見事投げられたカエルの明恵上人と理解できる。これだけの深さをもっているのが鳥獣戯画であった。こんな話は聞いたことがないので、実に興味深い書であった。